エントリーを決めてから、約一年間。久しぶりに練習を再開した。体は重く、なまりきっていた。初めは、ジョギングから再開して そのうち、自分でメニューを作り、1人で練習をこなしていった。
3か月を過ぎたころ、幼馴染{その男}からメールがきた。
「協力したいんだけど・・・」
ランナーは少し考えたが
「ほんとに?・・・」「よろしく・・・」
ここから、二人三脚の練習が始まった。以前、ばあちゃんとふたりで練習していたことを思い出す。
「きっと、ばあちゃんがめぐり合わせてくれたんだ」
はりあいが生まれ ふたりには信頼感がます。
約8か月のトレーニングでランナーらしい体つきになった。
精悍さも増す。一方、幼馴染は相変わらず腹がひっこまない。
もちろん、走って応援しているわけではなく、水分の差し入れ、ストップウォッチ押し、サプリの提供、などが主だ。
それでも十分ランナーにはこころ強かった。はきつぶしたスニーカーは3足になった。
大会まで1か月になった。{その男}も充実している。いっしょに戦ってきた同志だ。サポート役だけど。幼馴染同志、家庭環境が似てる同志。子供のころから寂しい思いをしてきた同志。年が離れてるんで弟のように思ってきた。
一流選手で高校時代からやってきているのをもどかしく、うらやましく、ときには嫉妬をしながら心 通わせて過ごしてきている。
やがて、残り10日というときに、{その男}がそのランナーになにやら 箱を手渡した。スニーカーだ。ランナーの好きなオレンジ色だ。「これ・・・」
「なにこれ・・・」
「これはいて走ってくれ・・」
「うんわかった」
ありがとうの言葉はない。心の中ではありがとうだけじゃすまない言葉がちゃんとあった。
「やってやる」「ばあちゃんみててくれ」「勇気をくれ」
ランナーは心の中でつぶやき当日を待った。
次回につづく・・・