立ち止まって水を飲む

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そのランナーとその男3 完結

とうとう、当日の朝がきた。今回の大会は大分国際マラソンの9月。相当暑い。

 

それも、二人の地元で{その男}の家の前を、ランナーたちが 通り過ぎて行く。小さい頃から、人が少ない沿道をさがして 応援していた。

 

そのランナーは前日は眠れなかった。無理もない。5年振りの大会だ。前の日に炊いたごはんに、納豆をぶっかけ、生卵をのせる。あとは、インスタントみそ汁。ごはんを用意してくれた ばあちゃんはもういない。

 

 

いよいよスタート!

そのランナーはユニホームの胸に黒い紋章をつけた。

「いっしょに走るぞ」

{その男}はテレビの前に陣地取る。

 

 

ヨーイドン!

走り出すと以外に冷静になっており、中盤をキープして10キロ

を過ぎたころ。  「順調だばあちゃん」心でつぶやく。

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20キロ過ぎたあたりから、沿道から「がんばれ」「いいぞ」と声援が多くなってきている。過去のファンだ。ランナーの境遇と物語を新聞でよんで応援に来ているのだろう。

 

 

30キロあたりから、様子がおかしい。呼吸が荒く、顔をしかめている。「ばあちゃん 助けてくれ!」心でつぶやく。

ときたま、ふらつく場面がテレビ中継で映し出していた。

 

 

{その男}はいてもたってもいられず、部屋着のまま家を飛び出した。ちょうどそのランナーが通るとこまでとにかく走った。

身なりなどどうでもいい。そのランナーのところまでただ行きたいだけである。

 

 

ランナーはもうフラフラ、視点が定まってない。上半身が右に傾き始めた。歩いたり、走り始めたり。

熱中症だ。沿道の人々がささやいている。

 

 

そのとき、{その男}が沿道をもすごい形相で全速力で走ってきた。Tシャツにブカブカのトレパン。薄毛はあせでピッチリ。


それでも、構わない。やっと追いつき、大声で叫んでいる。普段出さない大声を。

「もう  いい」「やめろ!」

 

 

その場面がテレビ中継された。

ある人は画面を見て、馬鹿笑いして けなす。

ある人は「はっ」と気づき、くぎ付けになる。

ある人は涙がとまらない。

 

 

{その男}はテレビに映っているのもかかわらず、そのランナーに駆け寄り抱き寄せた。この時点でリタイアだ。

 

 

 

係員も駆けつけ沿道に運ばれた。

 

「ダメだったばい」

 

「そんなこつなか」「ばあちゃんもほめとっぞ」

 

「・・・・・・」

 

「ま、水ばのめ」

 

「・・・・・・」

 

そのランナーにとっては、{その男}はたよりになる兄貴。

回りからはばかにしたり、陰口をたたかれたり するけれど・・・

 

 

 

体が回復してきたのを見計らって二人その場を去って行った・・

 

おわり

 

あくまでもショートあらすじなので

 

あしからず・・・・